胸腔鏡下手術


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胸腔鏡下手術

 胸腔鏡下(きょうくうきょうか)手術とは、胸に小さな傷をつけて行う手術方法です。胸腔鏡手術、鏡視下手術ともいいます。「バッツ」とも言います。バッツとはVATSと書きますが、これはビデオ補助胸腔鏡手術(video assisted thoracoscopic surgery)の頭文字を取った略語です。

 胸腔鏡は手術をするときの到達法の名称で、開胸に対する名称です。胸腔鏡下手術と呼ぶなら、開胸下手術と呼ぶべきでしょうが、開胸下とは言いません。ですから、私はわざわざ「下」を入れない方が簡潔と考えますが、「下」を入れる方が主流です。

 胸腔(きょうくう)とは肺の存在する場所で、左右の胸腔はそれぞれ12本の肋骨で囲まれた独立した空洞です。この空洞の中には左右の肺が入っています。下は横隔膜があり腹部と境界されています。左右の胸腔の間には、心臓があり、ここを縦隔(じゅうかく)と呼びます。

 胸腔鏡とは先端に小型のカメラを装着した棒状の機械です。胸腔鏡手術では皮ふを小切開して、肋骨と肋骨の間から胸腔鏡を挿入して、肺や縦隔の手術を行います。

 胸腔鏡下手術で切る場所は病変の部位や大きさによって異なります。胸腔鏡を直径15mm程の穴を通じて胸に入れます。このカメラは拡大した視野が得られるので中を詳しく観察することができるのです。穴をさらに2個開けて、電気メスやハサミを使用して手術を行います。

 胸腔鏡下手術の利点は手術の傷が従来の方法と較べると小さく、手術の後の痛みが少なく、早期に退院が可能であることです。

 胸腔鏡下手術の欠点は外科医に新たな技術が必要で負担になり、できる手術が限られていること、とっさの対応が遅れることです。胸腔鏡手術を行っていて、従来の開胸に途中で変更しなくてはならないこともあります。


胸腔鏡補助下手術

 小さな傷で開胸手術を行うときに、胸腔鏡を利用することを胸腔鏡補助下手術といいます。胸腔鏡補助下手術あるいは「バッツ」とも言います。バッツとはVATSと書きますが、これはビデオ補助胸腔鏡手術(video assisted thoracoscopic surgery)の頭文字を取った略語です。

 小さな傷で手術を行うときの問題点は、手術がやりにくいことともう一つあります。それは手術を行う場所が暗いことです。手術を行うときは無影燈という影のできにくい照明を用いますが、手術を行うために覗き込むと中は暗くなって良く見えません。

 胸腔鏡の良いところは、胸腔鏡(胸腔に挿入している棒状の機械)の先端にカメラとライトがついていることです。ライトのおかげで胸腔の中は明るく、肺や縦隔が良く見えるので、小さな穴から手術を行えます。ライトがなければ中は真っ暗です。開胸手術時に、陰になって見にくい場所や暗くて見にくい場所を、胸腔鏡補助下手術は見やすくできます。そして、小開胸に胸腔鏡を併用した胸腔鏡補助手術では、大きな傷でなくても手術が可能なことが多くなります。

 難しい手術では、大きな開胸に胸腔鏡を併用します。また、比較的行いやすい手術では傷を小さくして胸腔鏡補助下手術を行います。

 右上の絵は胸腔鏡補助下手術で肺がんに対する手術を行った時の手術記載です。

 胸腔鏡補助下手術の利点は、手術を行う部位が通常より明るく良く見えることです。また、手術の傷が従来の方法と較べると小さく、手術の後の痛みが少なく、早期に退院が可能であることです。

 胸腔鏡補助下手術の欠点は、傷が小さい時には胸腔鏡手術の欠点と同じです。


開胸手術



 左図のように、後側方切開(こうそくほうせっかい)という方法が定型的開胸と言われていました。これは、皮ふ切開が大きく、大きな筋肉を切開して胸に入る方法です。手術の視野が良く、安心して手術が行える方法です。





 右図は側方切開という方法です。この方法を前側方切開と呼ぶ人もいます。この切開は後側方切開に較べると傷も小さく、筋肉もほとんど切開しません。通常の肺の手術は大体この切開で行うことができます。

胸骨縦切開
 左図は胸骨縦切開(きょうこつじゅうせっかい)を行う時の皮ふ切開であり、胸骨を胸骨用の電気ノコギリでたてに切開するときに使用します。胸骨正中切開とも言います。

 心臓の手術、、胸腺腫の手術、重症筋無力症の手術などに用いられます。

 良性腫瘍の手術では胸腔鏡の手術の方が一般的に負担が少ないと考えられます。
 しかし、胸腺腫や重症筋無力症の手術では、周囲の脂肪組織も一緒に切除する拡大胸腺全摘術を行いますので、この方法のほうが確実で安心なのです。

2005.5 秋葉直志